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ホット・バタード・ラム


ホット・バタード・ラム



http://president.jp/articles/-/14758

2015年3月13日(金)

本当においしい「ホット・バタード・ラム」を飲んだことがありますか?

dancyu 2013年4月号

著者
文・鹿野真砂美 撮影・伊藤千晴 教える人:伊藤 学(バー「ネプラスウルトラ」店長)

花の便りも北上中。とはいえ、まだ肌寒く感じる日も多い。そんなときに覚えておきたい、ホット・カクテルがある。その名は、ホット・バタード・ラム。ラム酒を熱湯で割り、砂糖とバターを加えたもので、クローブやシナモンで風味づけすることも。クラシックなカクテルで、日本の卵酒のように、欧米では風邪気味のときに飲むカクテルとしても親しまれているとか。
ラム酒を熱湯で割り、砂糖とバターを加えたホット・カクテル「ホット・バタード・ラム」

ダーク・ラムの甘い香りと、バターの芳香が重なり、口に含めば、砂糖の甘さとバターのまろやかさがアルコールを優しく包み込む。飲むうちに、体は芯からポカポカだ。バーでは、シガーを吸う人にもお薦めだという。喉のいがらっぽさを、バターの脂肪分がマイルドにしてくれるからだ。「昔ながらのつくり方でも十分おいしいのですが、もっとマイルドでコクがあって、バター感を味わえるレシピがあります」と言うのは、六本木のバー「ネプラスウルトラ」の店長、伊藤学さん。それはまるで、お菓子づくりのようだった。

まず、バターに三温糖とスパイスを混ぜ込み、ミックスバターをつくる。これが、ホット・バタード・ラムの、いわば“素”で、そのままパンに塗ってもおいしそう。仕込んでおけば、いつでも飲みたいときに、さっとつくることができる。グラスに材料を順番に入れていく従来のやり方よりも、ミックスバターと熱湯をよく混ぜて乳化させ、ラムを注いで乳化させるという工程にすることで、全体がしっかりと混ざり合い、一体感とまろやかさが、格段にアップするのだ。バターは加塩タイプ。ほのかな塩気が全体を引き締める。蜂蜜は、マイルド感をプラスする名脇役。ミックスバターは二度に分けて混ぜることで、ラムのアルコール感をうまくコーティングしてくれる。

このレシピを提案したのは「ネプラスウルトラ」のオーナー、古田浩二さん。古田さんが主宰する「The Grand Cocktail」という勉強会から生まれたものだ。テーマにするカクテルを決め、週に一度集合しては、そのカクテルをあらゆる角度から研究している。スタンダードなカクテルでも、氷の角を取るか取らないか、ジンが先か後か、温度の違いなど、ほんの少しの工夫で、味わいが変化する。入手困難な材料は使わず、今ある材料を最大限生かしてレシピを構築する。こうしてブラッシュアップさせたレシピを広く公開、全国のバーテンダーが共有することで、バー全体の底力をアップさせるのが目的だ。

その恩恵は、呑んべえの一般人、私たちにも。さっそく家にある材料でつくってみたら、ホカホカと温まって、よく眠れること。今年のお花見は、ポットにホット・バタード・ラムを入れて。夜桜をいつまでも眺めていられそうだ。



ホット・バタード・ラムのつくり方

たっぷりのバターに、甘~い香りのシナモンを効かせる。よく混ぜ合わせて乳化させると、口当たりがリッチでマイルドに

【材料(1杯分)】

ダーク・ラム(マイヤーズ)……45ml、熱湯……90ml、ミックスバター……20g、蜂蜜……ティースプーン1/2杯
ミックスバターの材料(2杯分)
バター(加塩)……30g、三温糖……ティースプーン山盛り4杯、シナモン(パウダー)……ティースプーンすりきり1杯、ナツメグ、クローブ(ともにパウダー)……各ひとつまみ

まず、ミックスバターをつくる

【1】室温に戻した柔らかいバターに、三温糖を加えてよく混ぜる。
【2】残りの材料も加えてよく混ぜて完成。すぐに使わない場合は、冷蔵庫で数カ月は保存可能。使う前に使用分を室温に戻して柔らかくしておく。

次に、カクテルを仕上げる

【1】耐熱グラスに熱湯(分量外)を注いでから捨て、温めたところへ、分量の熱湯を注ぐ。
【2】ミックスバターを一杯分の4分の3量を入れ、マドラーなどで撹拌し、乳化させる。
【3】ラムを注いで混ぜ、さらに蜂蜜を入れて撹拌する。
【4】仕上げに、残りのミックスバターを入れて撹拌し、完成。

熱湯の代わりに、温めた牛乳を使えば、「ホット・バタード・ラム・カウ」になる。

夜桜の友に、ミックスバターとその他の材料を持参して、その場でカクテルを仕上げるもよし。もしくは、携帯用の保温ポットにすべての材料を入れて持ち歩くのもよし。飲む前にシャカシャカと振って乳化させること。

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